会社を調査する方法には何がある?与信調査はどうすれば?調査手法と注意点
2025/10/17

企業間取引(BtoB)において、取引開始前に相手の会社を調査するのは、今や当然の流れとなっています。
しかも、調査の項目は与信調査(信用調査)にとどまらず、反社会的勢力のチェック、レピュテーションの確認、詐欺リスクの特定など、複雑化の一途をたどっています。
「増え続ける調査項目にどう対応すればいいのか?」「具体的な調査方法やアプローチの選択肢が知りたい」と感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、取引開始前に相手の会社を調査する方法と、その具体的な手法、調査時に気をつけたい注意点について解説します。新規取引の確認から、既存取引先の再チェック、M&A・トラブル対応時の実態把握まで、ぜひ参考にご覧ください。
目次
取引開始前に会社を調査する目的
取引開始前に相手の会社を調査する大きな目的は、売掛金の貸倒れや取り込み詐欺・計画倒産による直接的な金銭的リスクから自社を守ることにあります。
特に、企業間の取引で主流の売掛金決済では、取引先の経営状況を事前に調査し、適切な与信判断を行うことで、支払遅延や焦げ付きが防げます。
さらに、取引先のコンプライアンス違反や反社会的勢力との関与が判明した場合、自社の社会的信用(レピュテーション)が低下し、ブランドイメージに大きな傷を負うリスクも考えられます。
これらのリスクを最小化し、安定したビジネスを継続するためにも、事前の企業調査と与信管理の徹底が重要なのです。
【レピュテーションとは】
レピュテーションとは、企業や組織に対する世間からの評判やイメージのことです。
評判の悪化により企業価値が損なわれるリスクをレピュテーションリスクと言います。
調査しておきたい項目・内容
調査項目は調査の目的によって多少異なりますが、一般的には以下の項目を押さえておくと良いでしょう。
調査項目 | 調査内容 |
---|---|
基本情報/企業情報 | ・所在地 ・代表者名 ・電話番号 ・役員構成 ・沿革 ・主力商品・サービス など |
財務状況 | ・信用調査会社での評価 ・経営状況 ・支払い能力 ・資金繰り など |
コンプライアンス | ・反社会的勢力の関与 ・許認可の有無 ・行政処分の履歴 ・訴訟歴 ・情報セキュリティ対策 など |
レピュテーション | ・業界内での評判 ・SNSやWebでの評判 ・過去のトラブル ・CSR(社会的責任)への姿勢 など |
関連記事:新規の取引先企業を調査する重要性|具体的な調査内容や調査方法とは? >
調査方法には様々なアプローチがある

会社を調査する方法には、様々なアプローチがあります。情報源の出所として分類すると、調査方法は以下の4つに分けられます。
①:内部調査(社内調査)
②:直接調査
③:外部調査(社外調査)
④:依頼調査
それぞれのアプローチで実施される具体的な調査方法について見ていきましょう。
調査方法①:内部調査(社内調査)
内部調査(社内調査)とは、自社内で調査を実施する方法を指します。
調査対象となる会社と過去に取引実績がある場合に用いられる調査方法で、「外部費用がかからない」「調査過程で得た知識やノウハウを社内に蓄積することができる」といったメリットがあります。
一方で、担当者の主観が入って客観性に乏しくなるケースや、手間・時間がかかり本来の業務を圧迫するリスクには注意が必要です。
取引履歴を確認する
過去の取引から支払い履歴や支払いサイト、取引額、取引額の推移などを確認します。取引先の資金繰り状況や、自社との関係が強化されているのか、あるいは縮小傾向にあるのかが把握できます。
関わりのある社員にヒアリングする
取引先の担当者と直接関わりのあった社員、例えば営業担当などから情報をヒアリングします。
ヒアリング内容としては、会社のキーパーソンとなる人物は誰か、またその人物の役職や担当部署、さらには性格や趣味などの個人的な情報も調査に活きる情報です。また、会社の組織図や担当者の異動情報、取引における課題、先方が抱えている悩み、今後実現したいこと、競合他社との関係性、市場における立ち位置など、調査に活用できる情報をできる限り多くヒアリングします。
調査方法②:直接調査
調査対象の会社に直接コンタクトをとって、代表や担当者にヒアリングしたり、現地訪問したりすることを直接調査といいます。会社や工場に出向く訪問調査が基本ですが、追加の調査時はオンラインや電話を活用することもあります。
具体的な調査内容としては、担当者の人柄はどうか、社内の雰囲気はどうか、社員の働き方や表情はどうか、事務所や工場内は整理整頓されているか、設備の状況はどうかといったことを確かめます。また、会社の事業計画や経営理念について直接ヒアリングすることで、公式サイトの内容に矛盾がなく、一貫性のある回答が得られるかどうかも調査します。
調査方法③:外部調査(社外調査)
外部調査(社外調査)とは、自社・取引先以外の第三者からの情報を用いて調査する方法です。
インターネットを活用する
公式サイトやSNS、ニュース、就職情報サイト、口コミ情報サイトなどから、会社の基本情報、経営理念、製品・サービス、組織構造、市場でのポジション、IR情報、従業員・顧客のリアルな声など、幅広い情報を取得していきます。
特にSNSや口コミサイトでは、表面的な情報だけではわからない社内の雰囲気や社風、顧客の忖度のない意見などを集めることができます。
加えて、過去のニュースや訴訟記録についても確認しておきましょう。
データベースを活用する
財務状況を調べるための調査、いわゆる信用調査や与信調査と呼ばれる調査では、帝国データバンクや東京商工リサーチが提供している有料データベースが役立ちます。
また、上場企業の決算書については、金融庁のEDINETや証券会社の適時開示情報、四季報などでも検索・閲覧することが可能です。
財務関係以外についても、官報の情報検索サービスを利用すれば、会社の破産や民事再生といった情報の有無がチェックできます。
対象企業の周辺から情報を得る(側面調査)
調査対象企業の周辺から情報を得ることを側面調査といいます。インターネットや書面だけでは把握が難しい非上場企業の実態や支払い能力、代表者の評判などを確認するためにも、重要な役割を持つ調査の一つです。直接調査で得た情報が正確なものかを確認する意図があることから、裏付け調査とも呼ばれています。
具体的な調査方法としては、例えば対象企業と取引がある会社や利用している金融機関、同業者、取引先が入居しているビルの関係者などから情報を聞き取ります。風評リスクや隠れた経営課題など、公開情報では見えないリアルな信用情報を入手できる場合があります。
調査方法④:依頼調査
専門の調査会社に委託し、取引先の信用情報やリスクを分析してもらう方法を依頼調査といいます。
調査会社では、公開情報だけでは得られない情報、例えば風評・評判などの非公開情報や、現場訪問による実態を、専門的なノウハウと情報網を用いて調査していきます。また、倒産リスクや詐欺リスク、反社会的勢力との関与の調査に対応している会社もあります。
調査会社は、探偵業法や個人情報保護法などのルールを守って調査が実行されるため、トラブルに巻き込まれるリスクも最小限に抑えられますし、調査に時間を割く必要がなくなり、本業に集中できるのも依頼調査の嬉しいポイントです。
依頼費用が発生する点や、調査プロセス・分析ノウハウが社内に蓄積されない点はデメリットですが、自社では得られない専門性の高い分析や、より公平で客観的な評価が得られる点、意思決定に活用しやすいように分析結果をレポートで提出してくれる点は大きなメリットだと言えるでしょう。
調査会社の種類
調査会社は、信用調査や市場調査など、それぞれ専門とする分野が分かれています。調査目的に合った調査会社に依頼しましょう。
調査会社 | 特徴 |
---|---|
信用調査会社 | 資力や支払い能力を中心に調査 |
レピュテーション調査会社 | 企業や組織に対する評判や風評を調査 |
市場調査/マーケティングリサーチ会社 | 消費者の動向や市場のニーズを分析する調査 |
総合調査会社 | 信用調査やレピュテーション調査、市場調査など、特定の分野に限定せず包括的に調査 |
関連記事:調査会社とは?サービス内容は?選び方のポイントや活用シーンを解説 >
会社を調査する時に注意すべきこと

次に、取引相手となる会社を調査する際に注意すべき点をご紹介します。
失礼のないように真摯な調査を心がける
調査活動において、不用意な接触や不適切な手法が相手企業に知られると、その後の関係悪化や信頼の喪失を招くリスクがあります。
特に、現地への訪問や担当者への取材を行う際は、相手に不快感を与えないよう、細心の注意と敬意を持って臨む必要があります。調査が水面下で行うものであっても、倫理的かつ誠実な態度を保つことが、結果的に正確な情報を得るために大切な要素となります。
情報の真偽を多角的に検証する
Web上の口コミやSNSの情報は手軽に入手できますが、誤情報や悪意のある投稿が混ざっている可能性を常に考慮しなければなりません。これらの情報を鵜呑みにして判断すると、企業の評価やビジネス上の意思決定を誤る重大なリスクにつながります。
一つの情報源に頼るのではなく、公的な情報や信頼できる第三者機関のデータと照らし合わせ、情報の客観性と信憑性を多角的に検証することが必要です。
コンプライアンス・法規制を厳守する
個人情報を含む情報を扱う場合、個人情報保護法や不正競争防止法をはじめとする各種の法規制に違反しないよう、細心の注意が必要です。
また人物調査を実施する際も、尾行などの行為はそれ自体が直ちに違法となるわけではありませんが、方法によってはストーカー規制法、迷惑防止条例、軽犯罪法などに抵触する可能性があります。
このように、法律の専門知識がない個人の判断で無理な調査を行うのは非常に危険です。安全かつ適法に正確な情報を得るためには、公安委員会から許可を得ている探偵業者や弁護士など、法律を遵守した範囲で調査を行うプロフェッショナルに依頼するのが最も安全で確実な方法と言えます。
関連記事:あらゆる不正、不祥事から会社を守るための尾行調査の使い方 >
効果的に会社の調査を進めるポイント
今回は、会社の調査方法と注意点について解説しましたが、より精度の高い調査を実現するには、内部調査や直接調査でリアルな情報を得つつ、外部調査でその情報の裏付けと客観性を確保するなど、調査手法を組み合わせることがポイントです。
また、反社会的勢力対策、M&A前のデューデリジェンス、または複雑な社内リスクなど、高度な専門性を要するものであれば、自社での情報収集には時間的・法的な限界がありますので、早い段階で専門の調査会社に相談することをおすすめします。
株式会社トクチョーは、60年以上続く総合調査会社です。豊富な経験と、長年の実績で培った調査力で、上場企業から中小企業・スタートアップまで、幅広くお客様のご要望にお応えしてまいります。
- ・反社会的勢力対策
- ・人材採用
- ・企業間取引(デューデリジェンス)
- ・上場準備(IPO)
- ・WEB風評被害対策
- ・社内リスク対策
- ・競合調査など
「こういう点を深掘りしてほしい」といった細かなご要望や、弁護士や外部専門家が関与するケースにも柔軟に対応できます。インターネットのみで完結する簡易的な調査ではなく、取材などからより深い情報収集が可能ですので、フォームまたはお電話にて、お気軽にご相談ください。