デューデリジェンスの費用と期間の目安は?コストと期間を抑えるポイントも解説
2025/12/17

M&A取引における数あるプロセスの中でも、特に重要なステップが「デューデリジェンス」です。
対象企業に潜むリスクを明らかにするために欠かせない調査ですが、その一方で、専門家やコンサルタントへの依頼費用がかかり、さらに期間も長期にわたるため、「予算の都合上、実施を省略したい」「調査範囲を狭めたい」とお考えの方も多いかと思います。
そこで今回はデューデリジェンスの期間と費用に焦点を当て、対象企業の調査にかかる期間と費用の具体的な目安、そして、これらを最小限に抑えるためのポイントを解説します。また、デューデリジェンスとは何か?という基礎知識にも触れています。
M&Aを検討されている方は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
デューデリジェンスとは
そもそも「デューデリジェンス(Due Diligence/DD)」とは、M&A(合併・買収)をはじめとする企業間取引において、対象企業の企業価値やリスクを徹底的に、そして網羅的に調査・評価することです。「買収監査」や「企業監査」とも呼ばれています。
M&A取引では、潜在的なリスクや問題点を事前に把握し、価格交渉や契約条件を適切に決定するための客観的な根拠を得ることが大切です。
そのために、買い手側は提示された情報や資料のみに頼るのではなく、専門家を交えて、売り手企業の財務状況や法的なリスク、事業の実態などを深く掘り下げて検証することが一般的です。
M&Aにおけるデューデリジェンスの位置付け
通常、M&A取引におけるデューデリジェンスは、基本合意書の締結後に実施されます。
【M&Aの流れ】
- ・買収相手の確定
- ・手続き関係(秘密保持締結/意向表明書提出/基本合意書締結など)
- ・デューデリジェンス
- ・最終条件の交渉
- ・最終契約(株式譲渡契約/事業譲渡契約など)
デューデリジェンスの結果は、M&A実行の是非や、最終的な買収価格、さらには表明保証や補償条項といった契約書に盛り込むべきリスク回避条項にも反映されます。
関連記事::デューデリジェンス(DD)とは?調査の目的・種類・実施方法・費用について >
デューデリジェンスの目的と主な種類
デューデリジェンスの最大の目的は、対象企業の価値を適正に評価し、買い手企業が認識していない潜在的なリスクを洗い出すことにあります。
具体的には、買い手企業が算定した買収価格が実際の価値に見合っているか?という点や、簿外債務、係争中の訴訟、法令違反、労働問題など、買い手側企業が負うことになる潜在的なリスクがないか?という点を調査していきます。
また、対象企業の事業構造や、組織文化、人材などを深く理解することも、M&A後の事業統合を円滑に進めるための重要な情報です。
デューデリジェンスの主な種類
デューデリジェンスでは、対象企業の規模や事業特性に応じて調査する範囲が異なり、複数の調査を並行して実行するのが一般的です。
【デューデリジェンスの主な種類】
- ・ビジネスデューデリジェンス
- ・財務デューデリジェンス
- ・税務デューデリジェンス
- ・法務デューデリジェンス
- ・人事・労務デューデリジェンス
- ・環境デューデリジェンス
- ・不動産デューデリジェンス
- ・ITデューデリジェンス
- ・人権デューデリジェンス
- ・リスクデューデリジェンス
例えば財務デューデリジェンスでは、財務状況の健全性や収益力、キャッシュフローの実態を調査し、法務デューデリジェンスでは、訴訟や法令違反といった法的なリスクを特定します。
それぞれの調査には高い専門性を要するため、財務は公認会計士、法務は弁護士、税務は税理士などと、その分野の専門家に依頼するのが基本的な流れとなります。
関連記事:M&Aに必須となるデューデリジェンス (DD)、社会保険労務士が行う労務DDとは >
デューデリジェンスにかかる期間の目安

デューデリジェンスにかかる期間は、対象となる売り手企業の規模や複雑さに応じて大きく変動しますが、一般的には大規模な企業で1ヶ月から3ヶ月程度、中小規模の企業で2週間から1ヶ月程度です。
期間に影響を与える要因
デューデリジェンスの期間に影響を与える主な要因は、以下の点があげられます。
【DD期間に影響を与える要因】
- ・売り手企業の規模や組織体制
- ・調査対象の範囲(分野・深さ)
- ・海外要素の有無(翻訳や法域差対応)
- ・データ開示体制や資料整備状況
- ・外部専門家との調整やコミュニケーションの速度感
- ・関係者のスケジュール
- ・買い手/売り手双方の意思決定スピード
企業規模が大きく、組織が複雑なほど、調査対象となる部門や資料が増え、期間は長期化します。さらに、海外に子会社を持つ場合などは、資料の翻訳や現地の法制度も調査する必要があるので、期間が大幅に長くなる傾向です。
また、売り手企業側で資料の整備が進んでいない、あるいは開示に消極的だと資料の収集と検証に時間がかかりますし、コミュニケーションのペースが遅かったり、スケジュールの確保が難しかったりといった要素も、調査が滞る原因となります。
デューデリジェンスの期間を早めるには?
デューデリジェンスの期間を早めるには、行き当たりばったりな調査にならないように、事前準備の段階で、M&A開始から統合完了までの手順を詳細に見通し、シミュレーションしておくことが重要なポイントとなります。
加えて、M&Aを行う目的や予算の大枠をはっきりとさせておき、譲歩できる条件と譲歩できない条件を線引きすることも期間短縮につながります。
なお依頼先によっては、追加料金を支払うことで調査期間を短縮してもらえるケースもあります。
デューデリジェンスにかかる費用の目安

デューデリジェンスの費用は、公認会計士や弁護士、税理士、調査会社など、外部専門家の報酬が主体となります。報酬は調査に要する時間に基づいて算出されることが多く、調査の範囲や深さ、企業の複雑さに比例して高くなります。
一般的な費用相場ですが、単分野の調査で数十万~数百万円、包括的な調査で数百万~数千万円となります。
コンサルタント費用やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)費用を含めると、上記の費用に加えて、数百万円程度が上乗せとなります。
費用に影響を与える要因
デューデリジェンスの費用を決定づける主な要因として、以下の点があげられます。
【DD費用に影響を与える要因】
- ・調査対象の範囲と深さ
- ・売り手側の規模や複雑さ
- ・外部専門家(公認会計士・弁護士・税理士等)の利用可否
- ・地域性や業界の特殊性
- ・作業量や報告書作成の要否
- ・DDの範囲(種類・深さ)※どこまでやるか
- ・海外案件か国内案件か
- ・資料の整備状況
- ・スケジュール(短縮対応か否か)
- ・報告書の形式・納品レベル
調査する分野が増えるほど、そして詳細な調査を求めるほど費用は高くなります。また、従業員数が多い、事業所が複数ある、事業内容が多岐にわたる、財務構造が複雑であるなど、企業規模や複雑さが増すと、調査に要する人件費が増大しますので、比例して費用も高くなります。
さらに、特殊な業界や海外案件の場合は、その分野に精通した専門性の高いコンサルタントが必要となりますし、著名な専門家に依頼したい場合も、中小の事務所へ依頼するのと比べて単価が高くなることが一般的です。
この他にも、前述の通り、通常の期間より短期間での完了を求める場合には追加料金が発生したり、より詳細な報告書の納品を希望する場合も費用が割高になることがあります。
デューデリジェンスの費用を抑えるには?
デューデリジェンスの費用を抑えるポイントは、余裕を持ったスケジューリングと、買い手・売り手双方の事前準備です。
M&Aでは、専門家を交えた打ち合わせや、買い手・売り手双方のトップ同士の面談が実施されます。関係者全員のスケジュールの確保ができず、一度予定がずれてしまうと、その後の予定も連鎖的に後ろにずれていきます。
M&Aの期限(クロージング)に間に合わせるために短期間での調査終了を目指すには、専門家に追加の人員や時間外労働を依頼することになり、結果的に追加費用を支払うケースがあります。
また、費用を左右する大きな要因の一つが、資料の整備状況です。調査に必要な財務資料や契約書、組織図などの資料が整理されていないと、調査チームが資料の収集・整理・確認から着手する必要があります。
本来の専門的な分析や評価作業以外の雑務的な作業量が増えると、当然ながら専門家への支払い費用が高くなってしまいます。
このように、無駄なコストがかかってしまう状況を避けるには、初期段階で無理のないスケジュールを設定して、関係者間で円滑なコミュニケーション体制を構築すること、そして、必要な資料を速やかに準備しておくことが大切なのです。
【デューデリジェンス】期間と費用のアドバイス
M&Aの複数ある手順の中で、デューデリジェンスについては、最も時間をかけて丁寧に実施する必要があります。
「予算があまりかけられない」「早く買収手続きを進めたい」といった事情で調査する範囲を削ってしまうと、潜在的な債務・訴訟・税務リスクを見逃す可能性があり、結果として大損害に繋がってしまうからです。
このようなリスクに対する損失や損害賠償額は、デューデリジェンスの調査費用を上回るケースも往々にしてあるため、範囲を狭めるのはお勧めしません。
「取引規模が小さいから省略しても良いだろう」「安心できる会社だから調査はスキップしても問題ないだろう」と判断せず、経験豊富なコンサルタントや調査会社に相談し、企業規模やM&Aの形態、最も懸念されるリスクを考慮した上で、費用対効果の高い調査範囲を定めることが賢明です。
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