【分野別】デューデリジェンス(DD)のチェックリスト|調査内容と目的とは?

2025/12/18

【分野別】デューデリジェンス(DD)のチェックリスト|調査内容と目的とは?

M&A(合併・買収)をはじめとする企業間取引において、対象となる企業の価値や潜在的なリスクを評価する調査を「デューデリジェンス(Due Diligence/DD)」といいます。そして、対象企業をあらゆる角度から評価するため、財務や法務、人事・労務、レピュテーション(評判)など、分野ごとに深く調査を進めていきます。

そこで今回は、デューデリジェンスでは具体的にどのような調査を実施していくのか、分野別のチェックリストをご紹介します。

また後半では、デューデリジェンスを自社ですべきか、それとも仲介会社や調査会社に依頼すべきか悩んでいる方に向けて、それぞれのメリット・デメリットについても解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

【分野別】デューデリジェンスのチェックリスト

デューデリジェンスの主要な分野ごとのチェックリストと、どのような目的で調査を実施するのかについてご紹介していきます。

【DDチェックリスト一覧】

  • ・法務
  • ・財務
  • ・税務
  • ・ビジネス
  • ・人事・労務
  • ・IT
  • ・人権
  • ・リスク

なお、ご紹介するリストはあくまで一般的な調査項目となります。対応する調査会社や専門家、ケースによって異なる点にご留意ください。

関連記事:デューデリジェンス(DD)とは?調査の目的・種類・実施方法・費用について >

法務デューデリジェンスのチェックリスト

【法務DDのチェックリスト】

  • ・契約書・取引関係の確認
    (取引基本契約、業務委託契約、労務契約、秘密保持契約などの内容)
  • ・訴訟・紛争リスクの有無
    (過去・現在の訴訟、クレーム、係争案件、潜在的な紛争リスク)
  • ・知的財産権の保有・管理状況
    (商標・特許・著作権の権利関係、ライセンス契約、侵害リスク)
  • ・法令遵守・コンプライアンス体制
    (業法・規制法令の遵守状況、内部統制、ガバナンス、反社チェック)

法務デューデリジェンスでは、対象企業の事業運営に法的なリスクが潜んでいないかを多角的に確認します。特に、取引基本契約や委託契約、秘密保持契約などの主要な契約の内容とリスクは、買収後の事業継続に直結します。

また、過去・現在の訴訟やクレーム、表面化されていない紛争などは、今後想定外の費用発生につながる可能性があります。

さらに、商標や著作権などの知的財産の権利保有状況、ライセンス契約の適正性、業法や規制法の遵守状況、反社チェックなどのコンプライアンス体制もチェックするポイントです。

財務デューデリジェンスのチェックリスト

【財務DDのチェックリスト】

  • ・財務諸表の妥当性と会計処理の適正性
    (粉飾の有無、会計方針の妥当性、追徴税リスク、繰延税金資産の評価)
  • ・売上・利益の推移と収益構造
    (主要事業の収益性、季節変動、顧客集中、異常値の有無)
  • ・負債・債務の状況
    (借入金、保証債務、偶発債務、簿外債務の有無)
  • ・資金繰り・キャッシュフローの健全性
    (営業・投資・財務CFのバランス、運転資金の状況)
  • ・将来収益性の見通し
    (事業計画の妥当性、将来キャッシュフロー、シナリオ分析)
  • ・経営者の私的支出の有無
    (役員報酬、関連当事者取引、個人利用の混在)

財務デューデリジェンスでは、対象企業の財務状態や収益構造が、健全かつ持続可能かを確認します。財務諸表が適切に作成されているか、会計処理に恣意性がないかを検証し、繰延税金資産の正当性や追徴税リスクの有無を調査していきます。

また、売上・利益の推移から収益構造や顧客依存度を把握し、将来の収益性を評価するのに加えて、負債・債務の状況や簿外債務の有無、キャッシュフローの健全性を確認し、資金繰りのリスクを明確化します。

さらに、経営者の私的支出や関連当事者取引など、財務に影響を与える不透明な要素も、重要なチェック項目です。

税務デューデリジェンスのチェックリスト

【税務DDのチェックリスト】

  • ・納税状況の確認
    (法人税・消費税・源泉税などの申告・納付状況)
  • ・税務調査の指摘事項と改善状況
    (過去の調査結果、是正・追徴の有無)
  • ・節税スキーム・税務ポジションの適法性
    (節税策が過度でないか、グレーな処理がないか)
  • ・追徴税リスクの有無
    (未認識負債、税務判断の不備、非合理な会計処理)
  • ・移転価格税制・国外取引のリスク
    (関連者間取引の適正性、否認リスク)

税務デューデリジェンスでは、対象企業が適切に納税を行っているか、潜在的な税務リスクが隠れていないかを確認します。

法人税・消費税・源泉税などの申告と納付状況をチェックし、過去の税務調査での指摘事項や是正状況を把握します。また、節税スキームの適法性の検証、過度な節税策やグレーゾーンの税務処理がないか、税務判断の誤りによる未認識の追徴税リスクについても確認します。

もし海外に子会社を保有している場合は、移転価格税制の可否や、否認リスクも調査ポイントです。

ビジネスデューデリジェンスのチェックリスト

【ビジネスDDのチェックリスト】

  • ・顧客・取引先の信用状況と依存度
  • ・市場環境・競合・業界動向
  • ・収益構造と競争優位性
  • ・仕入先・協力会社の安定性
  • ・組織・人材の安定性
  • ・業務プロセスの効率性・再現性
  • ・事業計画の実現可能性と成長性

ビジネスデューデリジェンスでは、対象企業の事業が持続的に利益を生み、成長できるかを多角的に評価します。

主要顧客や取引先の信用力、依存度を確認し、売上の安定性を把握する他、市場環境や競合状況、外部環境の変化が事業に与える影響なども分析。収益構造や競争優位性から、どこに利益源泉があり、どこに競合他社の追随を許さない強みを持っているかを検証します。

また、仕入先の安定性やサプライチェーンリスク、人材確保の状況も重要な評価ポイントとなります。

この他にも、将来価値を判断するために、現在の業務プロセスが再現性・効率性を備えているか、事業計画の実現可能性や成長性が適正かといった点も確認します。

人事・労務デューデリジェンスのチェックリスト

【人事・労務DDのチェックリスト】

  • ・規程・契約の整備状況
    (就業規則、雇用契約、その他社内規程の適法性)
  • ・労働時間管理・賃金支払い状況
    (残業時間の把握、未払い残業代リスク、過重労働の有無)
  • ・社会保険・福利厚生の適正性
    (加入漏れ、制度運用の実態)
  • ・人事管理と労働条件
    (配置・評価・処遇、人員構成、離職率、従業員満足度)
  • ・労使関係とトラブルの有無
    (相談・懲戒の履歴、ハラスメント、組合対応、係争案件)
  • ・法令遵守・行政対応
    (監督署からの指導・是正勧告、改善状況)
  • ・経営者依存・組織体制のリスク
    (属人化、キーパーソン依存)

人事・労務デューデリジェンスでは、M&A後に想定外のコストやトラブルが発生しないように、対象企業の労務管理体制を幅広く確認します。

特に、就業規則・雇用契約などの規程類の適法性や、残業代未払い・過重労働などの労働時間管理、社会保険の加入漏れといった法的リスクは、最も重要な調査項目となります。

また、指摘率の高さやハラスメント問題など、表面化しづらい内部リスクも重要であり、労基署の指導歴や係争案件の有無なども買収後の事業運営に直結します。

関連記事:M&Aに必須となるデューデリジェンス (DD)、社会保険労務士が行う労務DDとは >

ITデューデリジェンスのチェックリスト

【ITDDのチェックリスト】

  • ・基幹システムの安定性・保守体制
  • ・サイバーセキュリティ対策の実効性
  • ・データ管理・バックアップ体制
  • ・DX・IT投資の進捗状況と将来計画

ITデューデリジェンスでは、企業の事業運営に欠かせないシステムが安定し、継続的に利用できる状態にあるかを評価します。

基幹システムの老朽化や保守体制の脆弱さは、買収後の障害リスクにつながるため、重要なチェックポイントとなります。サイバー攻撃の増加も踏まえ、アクセス管理、脆弱性対策、ログ監視などのセキュリティ水準を確認します。

また、データの管理・バックアップ・復旧体制を精査し、情報漏洩やデータ消失リスクを把握することや、DX推進状況・IT投資計画を確認し、事業成長に向けた技術的な基盤が整っているかも判断します。

人権デューデリジェンスのチェックリスト

【人権DDのチェックリスト】

  • ・人権方針・行動規範の整備と公開状況
  • ・強制労働・児童労働・差別の有無
  • ・ハラスメント防止・内部通報体制
  • ・サプライチェーンにおける人権配慮
  • ・多様性・ダイバーシティ推進状況
  • ・顧客・地域社会への配慮、情報保護(GDPR等)
  • ・潜在的な法定・レピュテーションリスク

人権デューデリジェンスでは、企業活動が人権侵害につながっていないか、またそのリスクを管理できているかを評価します。

人権方針や行動規範が明文化・公開されているか、強制労働や児童労働、差別、ハラスメントなどの実態がないか、さらには、このような問題に対する内部通報制度が機能してるかをチェックします。

特に、児童労働や強制労働、過酷な労働条件の強要といった深刻な人権リスクは、サプライチェーン全体において、途上国などでの原材料を調達する現場(最上流)や、配送ドライバー・季節労働者・派遣労働者といった販売・流通段階の現場(最下流)など、目が届きにくい場所で発生しやすくなっています。

サプライチェーンの川上から川下まで人権配慮が行き届いているか、さらには、地域社会・顧客への配慮が適切かも重要な視点です。

リスクデューデリジェンスのチェックリスト

【リスクDDのチェックリスト】

  • ・代表者・役員のバックグラウンド確認
  • ・反社会的勢力との関係の有無
  • ・行政処分・刑事事件・不祥事履歴
  • ・メディア・SNSでの風評リスク
  • ・コンプライアンス違反・内部通報案件
  • ・業界内での信用・評判

リスクデューデリジェンスでは、企業の信用や評判に影響を与える見えないリスクを精査し、M&A後の不祥事やレピュテーションリスクを防ぎます。

代表者・役員の経歴や過去の勤務先、関与した案件を確認し、信頼性や透明性を評価する他、反社会的勢力との関係有無や、過去の行政処分・刑事事件・不祥事の履歴を調査して、コンプライアンス面でのリスクも把握します。

さらに、メディア報道やSNSでの評判、内部通報案件の有無、業界内での噂も調査し、企業文化や内部統制の健全性も判断していきます。

仲介会社・調査会社は活用すべき?メリットとデメリット

仲介会社・調査会社は活用すべき?メリットとデメリット

デューデリジェンスの実施時は、“外部の仲介会社や調査会社を利用しなければならない”という決まりはなく、自社で実施しても何ら問題ありません。

しかし実際のところは、調査範囲が広く、調査内容も高度な専門知識を要する上、限られた期間の中で完了する必要があるため、仲介会社や調査会社に依頼するのが一般的です。

仲介会社や調査会社に依頼する方法

デューデリジェンスを進める方法には、直接専門家に依頼する方法と、仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)などのコンサルタントに依頼して一括窓口となってもらう方法の2通りがあります。

中堅~大企業のM&Aでは、仲介会社やFAに依頼するケースが多く、小規模では自社主導で各専門家に依頼するケースが多い傾向にあります。

仲介会社・調査会社を利用するメリット

外部の調査会社や専門家を利用する最大の利点は、専門性と客観性、そして効率性です。

専門的な知見と経験に基づき、自社では見落としがちなリスクを徹底的に洗い出すことができますし、第三者の客観的かつ冷静な視点で対象企業を評価するため、感情的なバイアスを排除することもできます。

また、調査専任チームによる短期間での集中調査が可能になるので、自社の経営陣や従業員がDD業務に追われることなく、本業に集中できます。

仲介会社・調査会社を利用するデメリット

一方で、デメリットとしては調査費用が発生する点があげられます。単分野で依頼することも可能ですが、コストカットのために調査範囲を狭めてしまうと、重大なリスクや問題に気付けず、依頼額以上の損失が生まれる恐れがあるため、お勧めはしておりません。

加えて、M&A取引をFAや仲介会社に委託する場合は、売り手と買い手双方のコミュニケーションが形式的になりがちな点にも注意が必要です。

M&A後のシナジー効果を最大化するには、定量的な側面だけでなく、丁寧なコミュニケーションを介して、企業文化や人材など定性的な側面も大切にすることが、M&Aを成功させる重要なポイントとなります。

リスクDDはトクチョーにお任せください

今回は、主要な分野におけるデューデリジェンスの一般的なチェックリストをご紹介しました。

デューデリジェンスは、M&Aの手続きの中でも、もっとも時間をかけて取り組むべき重要なステップです。分野ごとに幅広い項目を調査すること、そして、外部の調査会社や専門家を入れることが、リスクの最小化につながります。

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