デューデリジェンス(DD)とは?調査の目的・種類・実施方法・費用について

2025/11/17

デューデリジェンス(DD)とは?調査の目的・種類・実施方法・費用について

M&A(合併・買収)は企業にとって大きな成長のチャンスですが、反対に失敗して数千万円規模の大損失を被るケースもあります。

M&Aでの予期せぬ損失を避けるため、買収対象企業の実態や潜在的なリスクを多角的に、かつ徹底的に評価する一連の調査を「デューデリジェンス(DD)」といいます。このデューデリジェンスには法的な実施義務はないものの、取引の安全性を高める上で欠かすことのできない重要な業務プロセスの一つとなっています。

本記事では、企業のM&Aにおけるデューデリジェンスとは何か、基本的な定義や調査の目的、種類、実施方法、費用感について解説します。M&Aの実施を検討されている方は、ぜひ参考にご覧ください。

デューデリジェンス(DD)とは?

デューデリジェンス(Due Diligence/DD)とは、主にM&A(合併・買収)の局面において、対象企業の実態を評価することを指します。取引の過程における手続きのひとつであり、取引の安全性を高めるために不可欠な調査となっています。

なお、現場では「DD」や「デューデリ」と略したり、「買収監査」と呼ばれることもあります。

デューデリジェンスの目的とは?

デューデリジェンスの目的は、対象企業の表面的な情報を確認するだけでなく、以下のような多岐にわたる役割を担っています。

【デューデリジェンスの主な目的】
①:リスクの洗い出し
②:適正な企業価値の算定
③:M&A後の戦略立案
④:売り手側のM&A対策

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

デューデリジェンスの目的①:リスクの洗い出し

デューデリジェンスの根幹は、財務諸表などの表面情報だけでは見えないリスクや課題を明らかにし、その結果をもとに買収の是非や企業価値の妥当性を判断することです。ひいては、M&A後の想定外のトラブルや事業への悪影響を未然に防ぐことにもつながります。

デューデリジェンスの目的②:適正な企業価値の算定

デューデリジェンスの結果は、リスクの抽出にとどまらず、把握したリスクを踏まえて対象企業の企業価値を再評価するためにも活用されます。その評価結果は、最終的な買収価格や契約条件を決定する際の重要な判断材料となります。

デューデリジェンスの目的③:M&A後の戦略立案

デューデリジェンスの結果は、M&A後の経営戦略や統合計画の立案にも活用されます。対象企業の強みや成長性を踏まえ、シナジー効果の最大化や、新たな事業機会の発見につなげることにも貢献します。

デューデリジェンスの目的④:売り手側のM&A対策

上記3つは買い手側がデューデリジェンスを実施する目的ですが、売り手側が自主的にデューデリジェンスを実施することがあります。これを「プレデューデリジェンス(プレDD)」や「セラーズデューデリジェンス(セラーズDD)」といいます。

プレDDの目的は、M&Aの交渉前に自社の潜在リスクを特定・解消し、買い手側の懸念を払拭することと、M&Aの実現可能性を高めることにあります。

デューデリジェンスの依頼先と実施手順

デューデリジェンスでの調査項目は多岐にわたるため、例えば法務に関しては弁護士、財務に関しては公認会計士と、各専門家に依頼するのが通常です。

中堅~大企業のM&Aでは、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)や仲介会社などのコンサルタントが一括窓口となって各専門家を手配することが多く、小規模案件ではコストを抑えるためにコンサルタントを利用せず自社主導で実施するのが多い傾向です。国内のM&A市場全体での割合としては、FA/仲介主導が6~7割、自社主導で3~4割程度となっています。

デューデリジェンスの実施手順は?

デューデリジェンスの一般的な流れは以下の通りです。

1. 社内でチームを発足する(※この段階でコンサルが入る)
2. 依頼先を決定し見積書を依頼する
3. 業務委託契約・秘密保持を締結する
4. 資料を提供する
5. 専門家による調査実施
6. 専門家による調査報告を受け取る

FAや仲介会社をコンサルタントとして立てる場合は、プロセス全体をリードしてもらうために、チーム発足段階で契約を締結します。

また、調査方法については、調査チームが対象企業を直接訪問する他に、事前に「Q&Aリスト」を投げ、その回答を分析した上で調査することもあります。

関連記事:企業調査のやり方とは?調査方法や調査項目について解説 >

デューデリジェンスの主な種類は?

デューデリジェンスの主な種類は?

次に、デューデリジェンスの主な種類と、各DDの調査内容を見ていきましょう。

ビジネスデューデリジェンス(BDD)

ビジネスデューデリジェンス(BDD/Business Due Diligence)とは、M&Aが戦略的に正しい投資であるかを判断するために、対象企業の事業そのものを詳しく把握する調査で、M&Aコンサルタントの専門分野となります。

市場分析や事業戦略、競争優位性、主要取引先の安定性、シナジー効果の評価に焦点を当て、事業の将来性や戦略を分析します。

財務デューデリジェンス(FDD)

財務デューデリジェンス(FDD/Financial Due Diligence)とは、財務会計処理の適正さや、財務上のリスクがないかなどを把握する調査で、依頼先は公認会計士となります。

具体的には、財務諸表の妥当性や、正確な収益構造と利益の推移、資産の評価額、負債・債務の状況、キャッシュフロー(資金繰り)の実態、経営者による私的支出の有無などを確認します。

税務デューデリジェンス(TDD)

税務デューデリジェンス(TDD/Tax Due Diligence)とは、税務処理上でのトラブルや問題を把握する調査で、依頼先は税理士となります。

法人税・消費税・源泉所得税などの納税状況や、過去の税務調査による指摘事項、節税スキームの適法性、追徴リスク、移転価格税制の適用リスクなどの項目を確認します。

法務デューデリジェンス(LDD)

法務デューデリジェンス(LDD/Legal Due Diligence)とは、事業を行う上で法的なリスクがないかを把握する調査で、依頼先は弁護士となります。

各種契約書(取引・労務・秘密保持など)の有効性や、訴訟リスクの有無、知的財産権(特許など)の保有・管理状況、規制法令の遵守状況などを確認します。

人事・労務デューデリジェンス(労務DD)

人事・労務デューデリジェンス(労務DD)とは、労働環境や人事制度の適正性を調査し、未払い残業代や法令違反といった労務リスクを把握する調査で、社会保険労務士(社労士)または弁護士の専門分野となります。

人件費や評価体制の人事制度に加え、企業文化の違い、さらには経営層や中心となる社員の業績やスキル、人的リスクなどの項目も評価します。

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環境デューデリジェンス(EDD)

環境デューデリジェンス(EDD/Environmental Due Diligence)とは、調査対象の環境リスクを把握する調査で、環境コンサルタントや監査法人の環境アドバイザリー部門に委託されるのが一般的です。

主に対象企業が工場や研究施設、それらの跡地を保有する場合に行われるDDで、土壌汚染リスクや大気汚染リスク、アスベストの有無、許認可の有無、行政への報告が適切に実施されているかなどを評価します。

不動産デューデリジェンス(不動産DD)

不動産デューデリジェンス(不動産DD)とは、対象企業が保有する不動産価値とリスクを評価する調査です。

売り手企業が土地や建物を所有していると、M&Aの方式によってはその不動産が買い手に引き継がれることがあります。こうしたケースでは、不動産を含めた企業価値の評価が必要となり、不動産DDの結果が買収価格や契約条件に大きく影響します。

調査は、老朽化の状況などを確認する物理的調査、権利関係を確認する法的調査、収益性や市場価値を分析する経済的調査の3つの観点から行われます。また、調査内容が複数の専門領域にまたがるため、不動産鑑定士や弁護士、環境コンサルタントなど、様々な専門家が関与します。

なお、不動産DDは、M&Aの際だけでなく、不動産そのものの売買・投資においても、独立して行われることがあります。

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ITデューデリジェンス(ITDD)

ITデューデリジェンス(ITDD/Information Technology Due Diligence)とは、対象企業のIT技術力やインフラの運用状況を把握する調査で、ITコンサルティングファームや監査法人のITアドバイザリー部門が担当します。

単に機器やソフトウェアをチェックするだけでなく、統合後の運用を想定し、基幹システムの安定性・老朽化、サイバーセキュリティ対策の状況、データ管理体制、DX推進の状況なども評価します。

人権デューデリジェンス(HRDD)

人権デューデリジェンス(HRDD/Human Rights Due Diligence)とは、企業活動において人権侵害リスクがないか、また多様性への配慮が十分かを確認し、国際的な基準や法規制(GDPRなど)への対応状況を評価する調査で、社会保険労務士(社労士)または弁護士の専門分野となります。

具体的には、人権方針・行動規範、強制労働・児童労働・差別的取扱いの有無、ハラスメント防止体制、サプライチェーン全体での人権配慮、個人情報保護の遵守、多様性推進の取り組みなどを確認します。

リスクデューデリジェンス

リスクデューデリジェンスとは、対象企業やその関係者に関する信用・評判リスクを総合的に確認する調査です。反社会的勢力との関係や、過去の不祥事、風評リスクなど、企業の信頼性に影響を及ぼす要素を幅広く洗い出します。

調査内容に応じて依頼先が異なり、公になりにくい情報(反社会的勢力との関係、代表者の経歴、不祥事や係争の履歴、SNSや報道での風評など)の収集は総合調査会社が担当し、行政処分や刑事事件、コンプライアンス違反、係争中の訴訟といった法的リスクの評価は弁護士が行います。

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デューデリジェンスの費用相場は?

デューデリジェンスの費用相場は、単分野の調査で数十万~数百万円、包括的な調査で数百万~数千万円となります。コンサル費用を含めるとさらに数百万円程度が上乗せされます。

【デューデリジェンスの費用相場】
・単分野DD:数十万~数百万円
・包括的DD:数百万~数千万円

安全なM&Aを実現するポイントは「削らないこと」

安全なM&Aを実現するポイントは「削らないこと」

デューデリジェンスは上記のように高額な費用がかかり、さらに調査期間も数週間~2ヶ月程度必要になるので、「安く済ませたい」「スピード感を持って契約したい」といった理由から、調査範囲を削るケースがあります。

しかし、調査範囲を狭めてしまうと重大なリスクを見逃す可能性があり、実際、数千万円以上の大損失につながったケースは少なくありません。

デューデリジェンスは確かに時間もコストもかかりますが、新たなビジネスを安全に進めていくために欠かせない工程です。

会社と従業員、そして従業員の家族を守るためにも、M&Aの際は徹底したデューデリジェンスの実施をお勧めします。

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