反社会的勢力に関する法律を解説!企業がすべき反社対策とは?

2025/12/19

反社会的勢力に関する法律を解説!企業がすべき反社対策とは?

企業にとって反社会的勢力との関与は、取引停止や信用失墜、倒産、さらには刑事罰の対象となるなど、重大なリスクとなり得る問題です。そして、このようなリスクから企業を守るため、反社を排除するさまざまな法律が存在します。

今回は、暴力団排除条例(暴排条例)や犯罪収益移転防止法(犯収法)などの反社会的勢力に関係する主な法律と、企業での対策ポイントについて解説します。

「社内での反社チェック対策に力を入れたい」「取引先に反社関与の兆候が見られるが、どうすれば良いかわからない」などとお困りの方は、ぜひ参考にご覧ください。

反社会的勢力の定義

政府が発表している「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について|法務省」では、反社会的勢力の定義について、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」としています。

具体的には、暴力団や暴力団関係企業、社会運動等標ぼうゴロ*1、政治活動等標ぼうゴロ*2、特殊知能暴力集団*3など、暴力的・威力的・詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する者を指します。

*1:社会運動標ぼうゴロとは、人権問題や消費者問題などの社会的テーマを口実に、企業や行政に対して不当な利益を要求する者および集団のこと。

*2:政治活動等標ぼうゴロとは、社会運動や政治運動を装って、企業に対して不要な利益を要求する者および集団のこと。

*3:特殊知能暴力集団とは、暴力団との関係を背景に、その威力や資金的な繋がりを有し、法律や金融などの専門知識を悪用して、知能的な犯罪や不当な要求を行う者および集団のこと。

反社会的勢力に関する主な法律

反社会的勢力に直接関わりのある主な法律は、次の5つです。

【反社会的勢力に関する主な法律】

  • ①:暴力団排除条例
  • ②:犯罪による収益の移転防止に関する法律
  • ③:暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
  • ④:刑法(恐喝、威力業務妨害など)
  • ⑤:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

反社に関する法律①:暴力団排除条例

暴力団排除条例(暴排条例)は、反社会的勢力との関係を断つために、全国の自治体が制定している条例です。

暴力団だけでなく、その関係者や利益供与者など対象を広くとらえ、自治体の事業や住民の経済的取引から関与を排除するための基本理念や責務が定められています。具体的には、住民や事業者が暴力団と取引関係を持たないよう求める規定が設けられています。2010年に福岡県で初めて制定され、その後2011年には全都道府県で導入されました。

なお、条例名は地域によって異なり、例えば北海道では「北海道暴力団の排除の推進に関する条例」、東京では「東京都暴力団排除条例」、兵庫県では「暴力団排除条例」となっています。

【参考】
(PDF)福岡県暴力団排除条例|福岡県警 >
東京都暴力団排除条例|東京都 >
大阪府暴力団排除条例|大阪府 >

反社に関する法律②:犯罪による収益の移転防止に関する法律

犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法/犯収法)は、犯罪で得た資金が隠されたり洗浄されたりするのを防ぎ、テロや組織犯罪の資金源を断つための法律です。

犯収法は怪しい資金の流れを見逃さないための重要な位置付けで

対象・内容

犯収法の対象は、金融機関や不動産業者、貴金属取扱業者、一部の士業などです。これらの事業者には、取引時に本人確認、取引目的の確認、実質的支配者の把握、取引記録の作成と保存などが義務付けられる他、不自然な資金移動があれば速やかに行政機関に届け出る必要があります。

また2024年4月1日より、税理士及び税理士法人に対しても疑わしい取引の報告が義務化され、制度の対象がより拡大しました。

【参考】
犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)|e-Gov法令検索 >

説明をする税理士

反社に関する法律③:暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法/暴対法)は、暴力団の活動を弱体化させ、市民の生活を守るために制定された法律です。

企業や個人の経済活動に対し、暴力団が威力を背景に不当な介入を行う「民事介入暴力」への対処を可能にし、暴力団抗争などによる市民の巻き添え被害を防ぐことを目的としています。

対象・内容

暴対法では、指定暴力団員が金銭の要求や債務免除の強要といった不要な要求行為を明確に禁止し、違反があれば公安委員会が中止命令や再発防止命令を発出します。命令に従わない場合は罰則の対象となります。

また、一般人や企業が暴力団を利用して不要な要求を行うことも禁止されており、こちらも違反すれば罰則の対象です。

さらに、暴力団から被害を受けた人が警察本部に援助を求められる制度や、暴力追放運動推進センターなど公的機関が被害回復を支援する仕組みも整備されています。

【参考】
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)|e-Gov法令検索 >

反社に関する法律④:刑法(恐喝、威力業務妨害など)

刑法とは、犯罪と刑罰に関する法律です。どの行為を犯罪とし、どのような刑罰を科すのかが定められています。

反社会的勢力を直接的に名指しして規制するものではありませんが、反社が行う典型的な手口の多くは刑法上の犯罪に該当します。

対象・内容

例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 金銭や利益を不当に要求する行為は恐喝罪(249条)
  • 暴力や威圧的な態度で相手の業務を妨げる行為は威力業務妨害罪(234条)
  • 意図的に人を騙して金品を騙し取ったり不当な利益を得たりする行為は詐欺罪(246条)

これら以外にも、強要罪(223条)や傷害罪(204条)、暴行罪(208条)、脅迫罪(222条)、窃盗罪(235条)、横領罪(252条)などが関連するケースもあります。

また対象は、実際に行為を行った者だけでなく、そそのかしたり(教唆)、手助けしたり(幇助)した者も含まれます。

【参考】
刑法(明治四十年法律第四十五号)|e-Gov法令検索 >

反社に関する法律⑤:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)とは、暴力団や詐欺グループなどの組織的な犯罪に対して重い処罰を科し、犯罪収益を規制する法律です。1999年に公布され、2000年に施行されました。

組織犯罪の動機は不正な利益の獲得にあるため、その資金源を断つために、マネー・ローンダリングに対する厳しい処罰が設けられている他、犯罪行為で得た収益や、それに由来する財産について、国が強制的に没収、没収できない場合はその相当額を追徴する規定などが設けられています。

対象・内容

組織犯罪処罰法は、組織として犯罪を反復継続する集団を対象とし、暴力団だけでなく、特殊詐欺集団や薬物密輸組織、悪徳商法グループなども含まれます。

そして、この法律の特徴は、組織の一員として犯罪に関与した場合、刑法での刑罰に加えて、さらに重い刑が科される「加重処罰」である点です。

例えば、刑法での詐欺罪は「10年以下の懲役」ですが、組織的に行われた場合は「1年以上20年以下の拘禁刑」が加重されます。

【参考】
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律|e-Gov法令検索 >

反社対策が法律だけでは不十分な理由

反社対策が法律だけでは不十分な理由

反社会的勢力の排除に向けてさまざまな法律が整備されていますが、企業の実務では「法律があるから安心だ」とは残念ながら言えません。

なぜなら、多くの反社会的勢力は、表向きの姿を巧妙に隠して活動しているからです。暴力団員ではない準構成員や周辺者、フロント企業の役員として経済活動に紛れ込むケースも多く、外側から見た情報だけでは見抜けないことが少なくありません。

また、公的なデータベースや登記簿だけでは、反社とのつながりが把握しきれないという限界もあります。法人の役員情報や住所から判断できるのはごく一部であり、実質的な支配者が隠れていたり、名義を借りて企業活動を行っているケースも存在します。

そのため、実務では法律の枠組みに頼るだけでなく、疑わしい取引先の兆候を早期に見抜くための体制を社内に整備することが重要となります。

企業が取るべき反社対策のポイント

企業が反社会的勢力との関係を未然に防ぎ、健全な事業経営を維持するためには、日常業務の中でコンプライアンスを強化する体制が求められます。

まず重要なのが、取引相手が反社に関与していると判明した場合や、関係が疑われる行為があった場合に、契約を即時解除できるよう、取引契約書に「暴力団排除条項(暴排条項)」を必ず盛り込むことです。

また、社内規定や業務マニュアルにも、反社チェックの手順や、疑わしいケースが発生した際のエスカレーションフロー、対応禁止事項などを明文化しておき、さらに、それが浸透するように、社員教育や研修を定期的に実施することもポイントとなります。

これらの対策に加えて、外部の調査会社による反社チェックがいつでも利用できる体制を整備しておくことも効果的です。反社に関する情報は一般的なインターネット検索では把握できないため、反社チェックを専門に扱う調査会社を利用することで、より精度の高い判断が可能になります。

反社関連調査はトクチョーにお任せください!

今回は、反社会的勢力に関する主な法律をご紹介しました。

反社リスクは取引開始時だけでなく、取引の途中に急に生じる可能性もあります。そのため、契約後も企業情報の変化や関係者の動向を定期的にモニタリングし、問題が発生しそうな兆候を早期に把握することも大切です。

私たち総合調査会社トクチョーでは、取引開始前の反社会的勢力関連調査はもちろん、取引中のモニタリング調査にも対応しております。公開情報の収集だけでなく、対象者周辺への聞き込み(内偵)も可能です。

【調査サービス】トクチョーの反社会的勢力関連調査について >

総合調査会社トクチョーで「価値ある情報」を

株式会社トクチョーは、60年以上続く総合調査会社です。豊富な経験と、長年の実績で培った調査力で、上場企業から中小企業・スタートアップまで、幅広くお客様のご要望にお応えしてまいります。

  • ・反社会的勢力対策
  • ・人材採用
  • ・企業間取引(デューデリジェンス)
  • ・上場準備(IPO)
  • ・WEB風評被害対策
  • ・社内リスク対策
  • ・競合調査など

「こういう点を深掘りしてほしい」といった細かなご要望や、弁護士や外部専門家が関与するケースにも柔軟に対応できます。インターネットのみで完結する簡易的な調査ではなく、取材などからより深い情報収集が可能ですので、フォームまたはお電話にて、お気軽にご相談ください。

ビジネスでの調査なら総合調査のトクチョーへ

1965年創業の信頼と実績。
総合調査会社として、企業経営やビジネスでの意思決定に必要な、データベースからは得られない情報をお届けしています。

状況に応じた 多面的な調査により、取引先や競合企業についてより充実した理解のためにご利用いただけます。

また、 労務管理にまつわる社員の調査、クレーマーや不審人物の素性調査等もお気軽にご相談ください。

1965年創業の信頼と実績。
総合調査会社として、企業経営やビジネスでの意思決定に必要な、データベースからは得られない情報をお届けしています。

状況に応じた 多面的な調査により、取引先や競合企業についてより充実した理解のためにご利用いただけます。

また、 労務管理にまつわる社員の調査、クレーマーや不審人物の素性調査等もお気軽にご相談ください。