新規の取引先企業を調査する重要性|具体的な調査内容や調査方法とは?

2025/10/16

新規の取引先企業を調査する重要性|具体的な調査内容や調査方法とは?

新たな取引を開始する際、「取引先と良好な関係を築きビジネスを成長させたい」というのは、多くの経営者、そして担当社員の願いでしょう。

しかし、新たな取引には、さまざまなリスクが潜んでいるのも事実です。安心して取引を進めるため、企業間取引(BtoB)では、取引開始前に相手の実態を調査することが一般的です。

本記事では、新規取引の開始時、取引先企業の調査がなぜ重要なのか、どのようなリスクが潜んでいるのかを解説します。また、具体的な調査内容や方法、トラブルを避けるための対策、調査の専門機関である調査会社の活用方法もご紹介します。ぜひ参考にしてください。

新規の取引先を調査する重要性

新規取引先とのビジネスには、売掛金の貸倒れや詐欺といった直接的な金銭リスクだけでなく、取引先のコンプライアンス違反によって自社の信用が低下するといった間接的なリスクも潜んでいます。

ここでは、具体的な問題点やトラブルに触れながら、調査の重要性について見ていきましょう。

売掛金の貸倒れリスク

企業間の取引では、売掛金による決済が主流です。売掛金は帳簿上「売上」として計上されますが、実際にお金が入ってくるまで手元に現金があるわけではありません。

取引先からの支払いが遅延した際、単なる失念ではなく、資金繰りの悪化によるものであれば焦げ付く可能性があります。

売掛金の貸倒れを防ぐためには、取引開始前に取引先の経営状況を十分に調査し、与信判断を適切に行うことが欠かせません。

取り込み詐欺や計画倒産に遭遇するリスク

売掛金の焦げ付きとは異なり、悪意をもって行われるのが「取り込み詐欺」です。

取り込み詐欺とは、代金を支払う意思が最初からないにもかかわらず商品を仕入れる行為を指し、俗に「パクリ屋」と呼ばれる組織が関与するケースもあります。

手口は巧妙で、初期の取引では少量の仕入れで少額を現金で支払って信用を得た上で、取引先の警戒心が薄れた段階で大量に仕入れて高額の不払いを行うというものです。

また、これによく似た詐欺行為として「計画倒産」があります。

計画倒産とは、倒産する予定を隠しながら通常通りの仕入れや融資を受け、意図的に債務を踏み倒すというものです。取り込み詐欺が個別の取引先を対象とするのに対し、計画倒産は複数の取引先や金融機関、さらには従業員までも巻き込む、大規模かつ深刻な詐欺行為となります。

このような不正行為に巻き込まれるリスクを最小化するには、取引先に対する事前の企業調査を通じて、信用状況を的確に把握し、与信管理を徹底することが重要です。

自社の社会的な信用やレピュテーションが低下するリスク

取引先の属性や行動は、自社の評価にも大きな影響を及ぼします。

例えば、反社会的勢力との関与やマネーロンダリング(資金洗浄)に加担している企業と取引した場合、自社もその一部と見なされる可能性があります。

また、取引先が児童労働、強制労働、不法投棄などの違法行為や環境破壊に関与していた場合、自社も間接的に加担していると受け取られる恐れがあります。

こうした情報はSNSを通じて瞬時に拡散され、消費者から「この企業の商品やサービスは利用しないでおこう」と敬遠される事態に直結しかねません。結果として、ブランドイメージに大きな傷を与えることになります。

このようなリスクを避けるためには、取引先がコンプライアンスを遵守し社会的責任をきちんと果たしているかを確認し、企業としての姿勢や社会的な評価も調べておく必要があります。

【レピュテーションとは】
レピュテーションとは、企業や組織に対する世間からの評判やイメージのことです。
評判の悪化により企業価値が損なわれるリスクをレピュテーションリスクと言います。

新規取引先への調査内容

取引先について調査する主な内容は下記の項目・内容となります。

調査項目 調査内容
基本情報 ・所在地
・代表者名
・電話番号
・役員構成
・沿革
・主力商品・サービス など
財務状況 ・信用調査会社での評価
・経営状況
・支払い能力
・資金繰り など
コンプライアンス ・反社会的勢力の関与
・許認可の有無
・行政処分の履歴
・訴訟歴
・情報セキュリティ対策 など
レピュテーション ・業界内での評判
・SNSやWebでの評判
・過去のトラブル
・CSR(社会的責任)への姿勢 など

この他にも、経営者など特定人物の素性(身辺)調査や、社内の雰囲気・社風・文化などを調査するケースもあります。

取引先への一般的な調査方法

取引先への一般的な調査方法""

次に、取引先への一般的な調査方法について解説します。

社内にある情報を収集

取引経験のある企業の場合、過去の契約書や取引履歴、営業担当者からの情報など、自社内にすでに蓄積されている情報を整理していきます。内部調査とも呼ばれています。

外部の調査会社に依頼する場合でも、社内にある情報をあらかじめ洗い出すことで、より深い調査が可能になり、コストも削減できます。

有料データベース・公開情報の活用

帝国データバンクや東京商工リサーチといった有料データベースを利用すれば、各信用調査会社が収集・分析した客観的な財務情報を得ることができます。また、可能であれば決算書も確認しましょう。決算書は、企業の財務状況や健全性が把握できるだけでなく、開示に応じる姿勢そのものが信頼性の判断材料となります。

原則、株式会社の場合は規模に関係なく決算書を開示する義務があるので、金融庁が運営しているEDINETや、証券取引所のサイト、四季報、取引先企業のサイトなどで探すことが可能です。

対して、合同会社や有限会社は決算公告の義務がありません。そのため、取引先に対して直接提出を求める必要があります。取引先への開示は義務ではないものの、健全な企業であれば取引に影響することから、提出してもらえることが多い傾向です。

代表者や担当者へのヒアリング

経営方針や事業の見通し、取引に対する姿勢などは、取引先の代表者や担当者に直接ヒアリングすると良いでしょう。対話を通じて、表情や雰囲気、受け答えの一貫性など、書面だけでは把握できない情報も確認することが可能です。

関係者への取材・ヒアリング

レピュテーションについては、業界団体や競合などの関係者から聞き取り調査を実施します。

ただし、不適切な調査や不用意な接触が取引先企業に伝わった場合、関係の悪化を招く恐れがありますので、相手に不快感を与えないように慎重な対応が求められます。

現場訪問による調査

所在地が登記簿と一致しているか、事業が実態を伴って運営されているかといった基本情報は、実際の現場を訪問して確認します。施設の整備状況や従業員の働き方など、現場でしか得られない情報も把握できます。

インターネットやSNSでリサーチ

企業の公式サイトや採用サイト、ニュース記事、SNS、口コミサイトに掲載されている内容も活用します。特に、SNSや口コミサイトでは、従業員や顧客のリアルな声が収集可能です。

調査会社に依頼

より網羅的かつ精度の高い調査を行いたい場合は、専門の調査会社へ依頼します。上記でご紹介したような方法に加えて、尾行調査など調査会社にしかできない手法も組み合わせて調査することが可能です。

自社だけでは得られない情報や、客観的な評価が得られるため、特に重要な取引や大規模な契約を控えている場合には、調査会社の活用が推奨されます。

関連記事:企業調査のやり方とは?調査方法や調査項目について解説 >

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詐欺やトラブルに巻き込まれないための対策

詐欺やトラブルに巻き込まれないための対策

次に、詐欺やトラブルに巻き込まれないようにするため、調査段階で特に注意すべきポイントや対策をご紹介します。

不審点を感じたら外部機関へ相談する

調査時に取引先に少しでも不審な点を感じたら、問題が顕在化する前に外部機関へ相談することが重要です。調査会社や弁護士などの専門家に早い段階で調査を依頼すれば、重大なトラブルが未然に防げます。

代表者の本人確認を徹底する

代表者の本人確認書類を見せてもらい、必要であればコピーも取らせてもらいましょう。特に中小企業や新しい取引先の場合、実際に経営に携わる人物を確認することで、なりすましや虚偽の契約が防止できます。

金融機関の口座情報を確認する

取引先の金融機関口座が実在するか、名義と会社名が一致しているかを確認しておくことも大切です。

信頼できる金融機関を通じた口座であれば、資金の流れの透明性がある程度確保できますし、逆に怪しい口座情報が提示された場合は、取引自体を見直すべきサインとなります。

前払いや分割払いを活用する

初めての取引や高額な契約では、取引先から全額一括の支払いを受けるのではなく、一部を現金で前払いにしてもらう、または分割払いを設定する方法があります。段階的に資金を移動させることでリスクが分散し、不測のトラブルが生じた際の損失を最小限に抑えられます。

売掛金保証サービスを利用する

取引先の信用リスクに備えるなら、売掛金保証サービスが役立ちます。

万が一、売掛金が回収できなくなった場合でも一定の補償が受けられるため、キャッシュフローへの影響を軽減することができます。特に、新規取引や取引額が大きい場合には、リスクヘッジの手段として、選択肢に入れておくのがおすすめです。

情報を鵜呑みにせず多角的な視点から確認する

得た情報をそのまま鵜呑みにしないのも、詐欺やトラブルに巻き込まれないために注意すべきことです。

中でも、公開情報やヒアリング内容、インターネット上の情報には、誤情報や一面的な評価を含んでいる可能性があります。複数の情報源を突き合わせ、矛盾点や不自然な点がないかを検証する姿勢を持つようにしましょう。

調査会社を活用するメリットと依頼方法

調査会社を活用するメリットと依頼方法

調査会社を活用する最大のメリットは、自社では得られない情報や客観的な評価を入手できることにあります。

法令に基づく安全な調査で法的なリスクが避けられるほか、自社では対応が難しい尾行や取材といった手法で、インターネット調査だけでは入手できない精度の高い情報を得ることも可能です。

さらに、調査結果がレポート形式で受け取れるため、意思決定に活用しやすいのも嬉しいポイントです。

調査会社の探し方

調査会社を探す方法は、いくつかのルートがあります。

【調査会社の探し方例】

  • ・インターネットで検索
  • ・「一般社団法人日本調査業協会」で検索
  • ・顧問弁護士からの紹介
  • ・経営者仲間からの紹介

また、出資を受けている場合は、VCなどに相談して共に対応する方法を取るケースもあります。

調査会社の決め方

候補がいくつか見つかったら、信頼できる調査会社かどうかを見極めます。

判断基準のひとつとして、各都道府県の公安委員会に探偵業の届出が受理されているかどうかが挙げられます。調査会社が実施する調査サービスに、尾行や張り込みといった実地調査が含まれるケースがありますが、このような業務を行うには探偵業の届出が必要となります。

参照:探偵業について|警察庁 >

届出がないまま上記の調査を実施している業者は違法となるため注意が必要です。なお、届出済みの調査会社は「一般社団法人日本調査業協会」でも検索できます。

また、誇大な表現や過剰な宣伝をしていないかも重要な判断基準となります。調査には限界があるため、例えば反社会的勢力との関係や不正の有無を「100%必ず発見できます」と断言することはできません。依頼者の不安を煽るような表現を多用する調査会社には気をつけましょう。

調査会社に依頼する方法と流れ

調査会社への依頼は、「相談」と「見積り」から始まります。調査可能な範囲や調査の難易度、必要となる費用感を把握した上で、契約へと進んでいきます。

【調査会社に依頼する流れ】

  • 1. 相談・打ち合わせ・情報提出
  • 2. 見積り・契約
  • 3. 調査開始
  • 4. 調査報告(レポート作成)

上記は一般的な流れで、調査対象・調査内容によっては見積り前に契約をするケースもあります。

調査会社をより効率的に活用するポイントですが、提供された資料が多ければ多いほど深度のある調査が可能となりますので、できるだけ多くの資料を集めておくことが望ましいでしょう。また、あらかじめ社内で調査できる情報をまとめておけば、依頼費用も削減できます。

安心できるビジネスの第一歩は取引前の調査から

新規取引開始時における取引先調査の重要性と調査方法についてご紹介しました。

新規取引には、売掛金の貸倒れや詐欺といった直接的なリスクだけでなく、取引先の不祥事によって自社の信用やブランドが傷つくといった間接的なリスクも潜んでいます。

こうしたトラブルを未然に防ぐには、取引開始前の調査が不可欠です。基本情報や財務状況、法令遵守の有無、社会的な評判などを多角的に調べ、リスクを事前に察知し、安心してビジネスを進めていきましょう。

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総合調査会社として、企業経営やビジネスでの意思決定に必要な、データベースからは得られない情報をお届けしています。

状況に応じた 多面的な調査により、取引先や競合企業についてより充実した理解のためにご利用いただけます。

また、 労務管理にまつわる社員の調査、クレーマーや不審人物の素性調査等もお気軽にご相談ください。

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